Real Blog

レジェンド鈴木が日々感じたことを哲学するブログ。書評、エッセイ、ポエムも書いてます。

第1話『アイツとの出逢い、見えない膜』 〜もしも、あの時お前が俺で、俺がお前だったなら… 〜

1998.5

この話を続けるため、最初にこれだけは語っておきたい。

 

俺がアイツ、すなわち沖野アタルと初めて出逢った時の事。それは、今から20年前に新卒で入社したアパレル通販会社の同期としての出来事だった。

 

ずいぶん前だけど、それはアイツを初めて個体として認識し、好敵手としても意識した日の出来事。アイツの記憶には一欠片も残って無いだろうけど、俺は今でもハッキリ覚えている。

 

まぁ昔の話だから、どーでも良いっちゃいーんだけど、避けて通れないので簡単に語ることにする。

 

俺たちが大卒で入社った会社は、アパレル通販の会社。季節毎に社内の女性ものの洋服やブランド品在庫が大量に余るわけ。

 

で、困ったことにナイスミセスの洋服、雑貨ばかりな訳で自分が欲しいものなんて一つも無い。お母ちゃん世代が好むようなものしか無いわけです…。

 

で、入社前から内定者全員に分厚いカタログか一冊渡される。そして、いくつか自分で購入してくれと、社会人としての洗礼を浴びらことになった。

 

もちろん、家族や親戚、友達に買ってもらってもいい。だけど、ナイスミセスな友達なんていないから、男にとっては頭を悩ませる課題だったな。

 

まぁ、こんな事は百貨店とかに勤めると、社内販売のノルマは日常茶飯事的によくあるって聞いてたから、しょうが無いなぁって思ってた。

 

大学卒業して入社するまでやることも無かったし、ヒマだったから結構マジメにこの社内販売に取り組んでみた。地元のコネクションを使って、ナイスミセス達に商品をたくさん買ってもらうことが出来たのは幸運だった。

 

そして5月中旬頃だったかな。当時100人くらい居た新入社員研修の最終日、全員が会議室に集められ、入社前に行った社内販売の結果発表が行われた。第10位くらいから名前と金額が発表されていく。

 

第10位の1万円くらい 〇〇さん

第9位 〇〇さん

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金額わかっているから、自信はあった。俺の名前はなかなか呼ばれない。

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第3位 5.4万円 Tさん

第2位 9.5万円 沖野アタルさん!

拍手、パチパチパチー!んん!誰だか知らんが、アイツか。なかなかやるな!みんなの拍手と本人の表情が微笑ましい。

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第1位 24.5万円 DENさん

スゥーって、えっ? 今、空気引いた?!俺の時だけ拍手じゃない…

 

この時の空気感は今でも忘れられない…。なんか、空気が一瞬で海水の引き潮時のように引いて、その反動で触っちゃいけない、何か見えない膜を破ってしまった感じがした。

 

映画バックドラフトの炎が爆発する前に、空気が吸い込まれる時の様な感じだった。

 

そして休憩時間、すぐにトイレで嫌味と陰口を叩かれたのをよく覚えている。

 

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     イラスト:鈴音レイ

 

「何なのアイツは…」

「一人だけ目立ちやがって」

 

ってね。あーそうかいな、そうきたかい。結構丸聞こえなんですけど〜。

 

俺はこの時大事な事を学んだ。社会には見えない壁というか幕がある。それを超えたり破ったりすると、何か変化が起きる。

 

みんなコイツは自分達と違うって思うと、急に攻撃的になる。会社って仲良しグループじゃないはずなのにね。

 

この時かな、沖野アタルという存在を意識し、同時に会社の見えない膜を感じたのは。そして「俺、これから40年とか会社勤めやっていけるのか?本当に大丈夫なのか?!」って思った。

 

この時から理想の会社員像と、今の素直な自分との間にズレが生じ始めた…。

 

しかし、ホントしょーもない話。でも、俺の人生において避けて通れない出来事だったので語っておきたかった。

 

そして、一つだけ言っておきたいことがある。この後すぐ、俺はアタルと仲良くなったわけではない。その後この会社に居た3年間はほとんど喋ったこともないし、記憶にもない。

 

どちらかというとお互い敬遠しあっていた気がする。ほぼ無干渉な関係だった。その関係は10年以上続くことになる。

 

つづく