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レジェンド鈴木が日々感じたことを哲学するブログ。書評、エッセイ、ポエムも書いてます。

08『 勝利をつかめ熱き想い、秘めたる闘志! 』 〜あの時、僕は〜

2018・2

「ファーン!」

 

その時、試合終了のブザーがアリーナに鳴り響いた。

 

「ふざけんなっ!こんな試合二度とするな! もう二度と…す、ん、な…二度と…」

 

試合終了後、僕は観客席でそう叫んだ。

 

周りの熱気、歓喜と悲鳴がうねり合い、折り混ざるアリーナで
人目を気にせずそう叫んだ。叫ばすにはいられなかった。

 

僕たち上木ガッツは、ミニバスの聖地さいたま市記念総合体育館で行われる、さいたま市ミニバス5年生大会、新人戦の順位決定戦にやって来た。

 

さいたま市のミニバス登録チームは男子で約40チーム。
今日2勝すれば3位以内が確定、1勝すれば6位以内となり、
翌週の最終決定戦に繋がる。2敗すればそれまで、という過酷な戦い。

 

6位以内に入ることができれば、次の春季大会のシードチームになれる。
だから絶対に負けるわけにはいかない!どのチームも必死に食らいついてくる。

 

さぁ、始まった。第一試合のティップオフ
初戦の相手、チームPとは昨年も何回か対戦している。

 

試合出だし、ガッツは動きが硬い。かたやチームPは吹っ切れてる。
一人一人が全力で伸び伸びとプレイしている。

 

ガッツは受け身にまわり、ロースコアの展開についていくのがやっと。
ゲームは終始、押され気味に展開した。

 

そして一進一退の攻防が続く。ガッツは3Qで最大5点差のリードをつけられた。まずい…、点が入らない、突破口が見えない。

 

応援するガッツメンバー、観客席の親たちも不安に駆られ始める…。

 

そんな時!どこかで聞いたことのある、ガッツではない
大きな応援コールが聞こえてきた!

 

あ、あれは!ゴール裏の観客席で、大きな声で応援している子供達がいる!
誰だ、彼らは?

 

チームKの子供達だ!
試合を観に来てくれてたんだ!

 

いつも練習試合でガッツがコテンパにされている、
チームKのみんなが応援してくれている!

 

その精一杯心のこもった応援は会場内にこだまし、
プレイするメンバーや僕たちに勇気を与えてくれた。
心からありがとう!

 

そして3Q中盤にチャンスは来た!
キャプテンのソウがフリースローのチャンスを得た。

 

「やった、これで追いつける!」誰もがそう思った。
彼がフリースローを2本外すことはまず無い。
いつも通りの彼なら…

 

だが状況は違った。2本とも失投。完全に会場の雰囲気に飲まれている。
これはまずい…
チームの精神的支柱である彼の2失投は、チームの士気に影響する。
2本目のフリースローも外れ、万事休す!

 

「だめだ!」そう思った次の瞬間だった…

 

ソウの親友リョウが直後のオフェンスリバウンドを奪取し、
ゴール下のシュートをねじ込んだ!

 

「ピーッ!」シュートファウル!
今日一番のガッツ応援コールが会場内に鳴り響いた。

 

そしてリョウはボーナススローの1ショットを沈め、
3点プレーで見事にソウの2失投をリカバリーした!
ナイスフォロー!こんな彼を見たのは初めてだった。
リョウはきっと無我夢中だった。

 

リョウ…

 

頭が良くて足が速い、優しくていつも控えめなリョウ。
ソウとは同じクラス、同じ習い事、バスケの時以外もずっと一緒にいるね。

 

バスケだって遠慮しないでもっと目立てばいいのに、
いつもソウスケの後に黙って付いていくリョウ。

 

「リョウが初めて自分から、このバッシュが欲しいって言い出したんです!」

 

バスケを始めてちょうど一年。君が初めて自分で選んだそのバッシュは、
ソウスケと同じバッシュの色違い。
君のお母さんとても喜んでいたんだよ。

 

君たちは似ているようで、全く似ていない二人
だけどお互いに何か補完しあっている二人。

 

そんな君が魅せてくれたこの1プレイ、本当に頼もしく嬉しかった。
君たちなら何があっても大丈夫、心配ないって思ったよ。

 

だけど…

 

リョウは3Qで足首を痛烈に捻挫していた。
3Q終了時に21対21の同点で終えることは出来たが、
4Qリョウマは出場できそうにない。観客席にも動揺が走る。

 

運命の4Qが始まった…

 

4Q前半、リョウの居ない劣勢の展開、1ゴールが遠い時間が続く。そして中盤のタイムアウト時だった。

 

まさか!

 

MACOっちゃんに応急処置された彼がコートに戻ってきた!
テーピングで固めたその足は、必死に痛みをこらえてる。
こわばった顔をしてるが、きっと何かやってくれる、みんなの希望を胸に。

そして残り2分。23対23同点の場面!
リョウがオフェンスリバウンドに競り合う!
痛みをこらえてのシュート!
やった!シュートファウルでフリースローを得た!

 

緊張のフリースロー。一本目ミス、足の痛みに耐えている。

 

そして2本目のフリースローが放たれた…

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「ズドドン…」

 

金属にボールが跳ねる鈍い音がした。

 


入った!

23対24!ガッツ1点差で勝ち越す!

 

そして残り50秒、ボールを必死に追いかける両チーム。
ガッツは最後にボールを奪われた。
相手チームが速攻ドリブルで走る!

 

僕たちの居る2階観客席から、TO席のデジタルタイマー残秒が見えない!
そして得点板の残分は1/2のままだ!

 

だめだ、完全にいかれた!

 

その時だった

 

「ファーン!」

試合終了のブザーがアリーナに鳴り響いた。

 

どうなったんだ?
まさか試合が終わったのか!

 

やった、勝った、逃げ切った!試合終了
23対24!

 

コート上で抱き合う子供達、喜ぶ観客席!
1点差の勝利。

 

これは負けていてもおかしくないゲーム。
あと3秒あれば間違いなく負けていた。
チームPの全力プレイ、戦う姿勢に敬意を表します。

 

1点差で逃げ切るゲームは久しぶりに経験した。
観ているほうはたまったもんじゃ無い!
だから

 

「やったー!おめでとう!」って最初に言いたかったけど、
それは二言目になってしまった。

 

「ふざけんなっ!こんな試合二度とするな!
もう二度と…す、ん、な…二度と…」

 

僕は自分の腹の中から湧き上がってくる、
その声を抑えきれなかった。